映画「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」公式サイト » インタビュー

インタビュー

松谷光絵監督・鈴木ゆかりプロデューサー インタビュー

──2005年にNHKのTV番組で、日本で初めてターシャ・テューダーさんを紹介された経緯を教えてください。

鈴木ゆかり:海外のガーデニングを紹介する番組を松谷光絵監督と担当していたのですが、取材した方々の中でターシャさんが憧れだとおっしゃる方が多かったのですね。それでぜひお会いしたいと取材依頼の手紙を送ったら、「いいわよ」という返事が来て。コマーシャリズムを嫌う方だと聞いていたので、NHKに企画を持ち込みました。

──初めてお会いになった時の印象はいかがでしたか。

松谷光絵:コーギコテージへ着くなり息子のセスさんから、「取材は受けるけれど15分しか保証しない。それ以上はあなたたち次第」と言われて、非常に緊張しました。そこへターシャさんが現れ、「庭仕事を始めるわよ。撮らないの」と言ってくださって。その後もカメラの前で淡々と日常の仕事をしながら「日本の天気はどう?」「この時期、旬の野菜は?」「明日は何時に来る?」など話しかけてくださり、さりげない気遣いが心にしみました。

──撮影に関してターシャさんから何かご要望はありましたか。

松谷:本当の意味での監督はターシャさんです。撮影にあたって特に指示はありませんでしたが、彼女が見せたいと思うものを正確に捉えることが私たちの役目でした。そして今回映画としてまとめる作業は、様々なシーンを通して彼女が何を伝えたかったのかを改めて考えること。まるでターシャさんからの宿題のようでした。

──監督が最もこだわられた点は何ですか。

松谷 ご存知の通りターシャさんはご自身の美意識を徹底的に貫かれた方ですから、撮影監督の髙野さんといかに美しく撮るかに心を砕きました。光の捉え方に定評のある髙野さんですが、驚いたことに、(ご存命中は)すべての取材で1滴も雨が降らなかったんですよ。

──撮影中のエピソードを教えてください。

松谷:ターシャさんが淹れてくれるアイスティーの美味しさは衝撃でした。レモンやライム、オレンジなどの果汁と、ジンジャエールが隠し味になっているのですが、毎回感激しましたね。マフィンを焼いてくださったり、夏はアイスクリームを作ってくださったり。ターシャさんにとって、毎日のティータイムは特別な時間でした。飲んでいるところを撮りたいと言うと、カメラを置いて一緒に飲みなさいと、たしなめられましたね(笑)。

ビデオ撮影などほとんど経験がないはずなのに、テラスでコーギ犬のメギーとくつろぐシーンを撮っていると、「その角度だとメギー越しに私が見えて、いい映像になるわね」と指摘されたり。研ぎ澄まされた美的感覚にハッとすることもしばしばでした。

──今回の映画化の経緯を教えてください。

鈴木:生誕100年記念で番組としてまとめ直した時に、ターシャさんからあらためて時代を超えた普遍的なメッセージを感じ取り、何とかして未来に残さなければと考えて企画を立ち上げました。

──どのような映画にしたいと思われましたか。

松谷:テレビ番組のときとは違い、映画ではナレーションを入れませんでした。いつ誰が観てもターシャさんと一対一で向き合うことができるものにしたいと考えたからです。

──サブタイトルの「静かな水の物語」は監督のアイデアだそうですね。

松谷:普段から冗談めかして「私はスティルウォーター教よ」とおっしゃっていたのですが、“静かな水”というのは大きな波に流されることなく静かに前進するというターシャさんの生き方と、水に映る自分自身を見つめるという在り様を象徴する言葉だと思っています。

──今回、初公開の映像がありますね。

松谷:彼女を支えてきたものの一つとして、書棚を撮らせてくださいとお願いして実現しました。

鈴木:「喜びの泉」で紹介されている作家たちの書籍が、すべて大切に保管されているのを拝見した時は感動しましたね。

──現在のお庭はいかがでしたか。

鈴木:今はお孫さん夫婦が手を入れてオープンガーデンにしているのですが、ターシャの生前の庭とはまた違う魅力を感じます。

松谷:テレビ嫌いのターシャさんが、なぜ取材を受けてくれたのか尋ねたら、「庭というのは絶えず変化する生き物だから、映像で残しておくのもよいかなと思った」と答えられました。きっと今も、変わり続ける庭の姿をどこかから眺めて、目を細めているのではないでしょうか。

──大きなスクリーンでの上映です。

松谷:デジタルリマスターを行いましたので、今までのハイビジョン映像よりさらに鮮明な画像になりました。映画館のスクリーンの前に座るだけで、まさにターシャさんの庭にいるような感覚を味わって頂けると思います。

──音楽やアニメーションにこだわられた点は。

松谷:どちらもターシャさんの熱心なファンでもあるアーティストたちが参加してくれました。音楽はただ美しいだけでなく、力強い生き方、小さな命に向ける細やかな愛情、自由自在に羽ばたく想像力などターシャさんの多彩な面を表現すべく、5人の実力者が結集した贅沢なものです。アニメは親子二代でファンだというゴトウマキコさんの手描きです。パラパラ漫画が大好きだったというターシャさんの遊び心を受け継いで、「私の絵が動いた」と喜んでもらおうという気持ちで作りました。

──これからご覧になる方へのメッセージをお願いします。

松谷:この映画は、影の大監督ターシャさんからの、「誰でも思い通りの人生を送ることができるのよ」というエールです。お一人お一人がターシャさんと向き合い、この先の人生を豊かにする鍵を見つけて頂けたら嬉しい限りです。